【新人指導】プリセプターの心構えと指導方法

看護業務

はじめてプリセプターを任された人へ

看護師のとらです。今までプリセプターを3年間務めました。
初めてプリセプターをしたのは4年目の時で、上手く教えられるのかというプレッシャーが大きかったのを覚えています。
看護師3~4年目はプリセプターを任されることも多いですが、これまで指導される側だったのが指導する側になるのですから不安は大きいですよね。
経験年数があっても、プリセプターを任された先輩看護師さんは不安やストレスを抱えながら指導している方も多いと思います。
今回は、そんなプリセプターさんに向けて新人さん(プリセプティ)との関わり方や指導の方法をまとめてみました。

新人指導って難しい…
どうやって教えたらいい?

とら
とら

私自身もたくさん悩みました…

プリセプティによって関わり方を変えながら試行錯誤したことや、上手くいった方法等をお伝えします。

自分のプリセプティに当てはまるものがあったら参考にしてみてください。

 

【この記事を読んでわかること】

  • プリセプターの心構え
  • プリセプティの年間計画の具体例
  • プリセプターのよくあるお悩みと解決策

プリセプターの心構え5つ

  1. 指導はプリセプターだけでなく病棟全体で行う
  2. 他のプリセプティと比べない
  3. 業務を疎かにしない
  4. プリセプティの精神面での支えとなる
  5. プリセプティと適度な距離感を保つ
とら
とら

項目ごとに説明していきます

指導はプリセプターだけでなく病棟全体で行う

プリセプターが1人ですべてを抱え込む必要はありません。
指導は病棟全体で行うものという認識を持ちましょう。
責任感の強い人ほど自分ひとりでなんとかしようとしてしまいがちなので、病棟の上司やスタッフに相談してどんどん周りに頼りましょう。

初めてのプリセプターであればアソシエイト(プリセプターの指導者)が付くこともあります。

他のプリセプティと比べない

病棟に複数のプリセプティがいる場合、自分と他のプリセプティの成長速度を比べないようにしましょう。
成長速度はプリセプティ自身も気になる部分です。
同じように進められるのが理想ですが、成長速度には個人差があるのでそうならない場合が多いです。
比べてしまうとプリセプターも焦ったり辛くなったりするので、プリセプティの成長に合わせて指導を行いましょう。

とら
とら

一年で自立を目指すところが多いと思いますが、自立できない場合もあると思います。どうしても他のプリセプティと比べてしまいがちですが、プリセプター自身がつらくなるだけなので、どうか自分の責任と思いすぎないようにしてください。自分のメンタルを守ることも大切です。

業務を疎かにしない

新人指導は通常の病棟業務の中で行わなければなりません。
たくさん教えたい気持ちがあるのはよいことですが、指導に費やす時間が長くなると業務が滞ったり残業につながります。
業務が滞ることで他のスタッフの負担になったり、患者さんに悪影響を及ぼしては元も子もありません。
プリセプティに実践させたり考えさせたりすることは大切ですが、業務とのバランスを考慮しましょう。

とら
とら

指導や振り返りは短時間で回数をわけて行いましょう。長時間たくさんのことを教えてもプリセプティの身になりません。

プリセプティの精神面での支えになる

プリセプターの役割として、プリセプティの精神的な支えになることはとても重要です。
常に緊張と不安の中にいるプリセプティにとって、病棟での一日は精神的につらいこともあります。
看護技術の習得ばかりに気を取られて精神面のフォローが疎かになると、プリセプティは指導についていけません。
プリセプターは看護技術だけでなく、精神面でのサポートも行いましょう。

とら
とら

プリセプティの精神面が保たれているかを確認するために、「食事は摂れているか」「夜は眠れているか」「リフレッシュする時間はあるか」など世間話として聞くようにしていました。こまめに声掛けをして、病棟での居場所を作ってあげることも大切です。病棟での一番の理解者になってあげられたらいいですね。

プリセプティと適度な距離感を保つ

上記で説明したように、プリセプターからこまめに声掛けを行ったり、プリセプティが相談しやすい雰囲気作りをして、信頼関係を築いていくことはとても大切です。
しかし、友達のようにあまりにも近くなりすぎると指導しづらくなってしまうので要注意です。
適度な距離感を保ちながら指導にあたりましょう。

プリセプティの年間計画の例:一般病棟の場合

大学病院と一般病院でプリセプターをした経験から作成した年間計画と目標設定です。
一般病棟の場合の一例です。
病棟の特徴・病床数・スタッフの人数・新人の人数・ラダーなどによって指導方法は異なってくると思います。
プリセプティの成長に応じて適宜変更する必要はありますが参考にしてみてください。

【一年を通して指導のなかで心がけること】

  • 一年ですべての業務自立は難しいという認識でいること(計画通りにいかないことが多い)
  • プリセプターから声掛けをすること(プリセプティからの報告を待ちすぎない)
  • 病棟全体にプリセプティの進捗状況や必要な指導内容をタイムリーに周知すること

4月

病棟オリエンテーション
基本的な看護技術の指導・実践

先輩看護師のシャドウイング、受け持ち患者1~2名
4月は配属されて間もないので、病棟オリエンテーションを行います。
病棟の概要や物品の位置などを説明します。
社会人としての自覚を持ってもらうことも大切です。
初めのうちは、採血・注射・点滴作成・血糖測定・移乗介助・体位変換・おむつ交換・排泄援助などの基本的な看護技術の習得を目指します。
全体研修などで実施する場合は、そのあとに病棟で実施していきます。
実施の機会があれば積極的に実践できるよう采配します。
また、先輩看護師のシャドウイングをして業務全体の流れを知ってもらいます。
できれば数名受け持ってバイタルサイン測定など基本的なことを実施してもらいます。
「シャドウイング」とは
先輩看護師に影のようについて回り一緒に行動すること。
ロールモデルの言動を観察することで全体を把握できる。

5月

先輩看護師とペアを組みシャドウイング
受け持ち患者2~3名
手術・入院などのイベントをペアの看護師と一緒に実施
ナースコールを取る
先輩看護師が受け持っている患者の中から2~3人を受け持ち、他はシャドウイングとします。
手術や入院などのイベントがあれば見学や一部の業務を一緒に行うようにします。
また、ナースコールも少しずつ取る練習をしていきます。
はじめは一緒にベッドサイドに行くようにし、徐々に1人で対応していきます。
ナースコール対応をした際は、必ず報告・連絡・相談してもらいます。

6月

受け持ち患者3~5名(リーダーとは別にフォロー者を置く)
初夜勤(先輩看護師とペア、シャドウイングのみ)
受け持ち患者を徐々に増やし、複数の患者を受け持つ練習をしていきます。
タイムスケジュールの組み方など時間管理も指導していきます。
また、何度か実践できている看護技術は少しずつ自立させていきます。
ひとつでもプリセプティ1人でできる業務が増えれば、スタッフの業務も軽減できます。
焦って自立させる必要はないですが、たくさん実践を経験させて自立を促すことも大切です。
可能であればお試し程度で夜勤を入れていきます。
日勤業務をする上で、患者の夜の状況を知ることも大切です。

7月

受け持ち患者3~4名+手術や入院などのイベント1件(フォローあり)
夜勤2回目(先輩看護師とペア、フォローあり)
手術や入院などの練習を開始していきます。
はじめは先輩看護師とペアで行い、徐々にフォローへ移行していきます。
イベントは回数を重ねることで慣れていきますが、あまり連日受け持ちさせるとプリセプティが疲弊してしまいます。
病棟の状況にもよると思いますが、プリセプティの様子を見ながら受け持ち患者を選択してください。
夜勤を入れられそうであれば、2回目は先輩看護師とペアを組みつつ自分で夜勤の流れを組み立てていく練習をしていきます。
フォローしてもらいながら実際に動いてもらいます。
とら
とら

夜勤の自立は焦らなくてもよいので、日勤業務を優先するようにしましょう

8月

受け持ち患者4~5名+手術や入院などのイベント1件(フォローあり)
夜勤3回目(先輩看護師とペア、フォローあり)
受け持ち患者と手術や入院などのイベントをこなせるよう指導していきます。フォローは必要です。
ある程度日勤業務をこなせるようになってきていれば、夜勤も入れていきます。
早めから入っておけば夜勤の経験回数も稼げますし、日勤ばかりよりは気分転換にもなります。

9月

日勤自立を目指す(リーダーフォロー)
夜勤4回目(先輩看護師とペアだが基本1人で実施)
秋頃には日勤自立を目指しますが、プリセプティの苦手な部分は引き続きフォローを継続していきます。
夜勤は徐々に自分で業務の組み立てから実施までを行ってもらいます。
緊急入院や急変対応なども指導していきます。
自立し始める時期は、インシデントも起こりやすいです
インシデントが起こった場合は、振り返りを行いどうすればよかったのかを一緒に考えます。
プリセプティは少なからずショックを受けていると思うので、精神面のフォローも忘れないようにしましょう。

10~12月

手術や入院などのイベントの自立を目指す(リーダーフォロー)
夜勤(リーダーフォローで入りだす)
プライマリーナーシング開始
手術や入院などの自立を目指します。夜勤もリーダーフォローで入り始めます。
この頃にはある程度の業務ができるようになっているといいですが、1年足らずではすべてを理解できません。
プリセプティが自分1人で実施しなければと思いすぎないよう、先輩看護師にいつでも相談できるような環境を整えることが大切です。
とら
とら

新人のうちは自分から声をかけづらいですし、忙しいときはなおさらです。自立してきたとしても、プリセプターやリーダーから声掛けを行い、業務が滞りなく進んでいるか・わからないことはないか聞くようにしましょう

また、日勤業務がある程度自立していればプライマリーナーシングを開始していきます。
経過が一般的な患者を選別し、はじめの1~2人は一緒に受け持ちながら指導します。
「プライマリーナーシング」とは
患者さん1人に対し、担当看護師が1人つくこと。入院から退院までの看護計画や評価を行う。

1~3月

イベント含めた日勤業務の自立
夜勤自立を目指す
1年間の評価

2年目に向けて、日勤・夜勤ともに自立を目指します。
病院によっては1年間の評価をこの時期にすると思います。
未経験の看護技術や自立していない業務を整理して、次年度の課題を明確にしておきましょう。

プリセプターのお悩み:こんな時どうしたらいい?

プリセプティがメモを取らない

なぜメモを取らないのか聞いてみる

実習を経験していきているので新人のうちからメモを取らないことは少ないかもしれませんが、一定数います。
「メモを取るように」と指導してもメモが取れるようになるかというと、そうでもありません。
メモを取らない理由を聞いてみましょう。
何をメモしていいいのかわからないメモすべき事項と気づいていないなどの原因が挙げられます。
「ここはメモしておくとあとから見直せて便利だよ」と伝えてみたり、何度も聞いてくることがあればメモするよう勧めてみてください。
メモの書き方やまとめ方がわからない場合は、はじめのうちは一緒に見てあげるとよいと思います。

プリセプティが事前学習をしてこない

事前学習を依頼するなら調べるべきことを明確にしておく

例えば、「○○の手術のことを調べてきて」と伝えるとします。
術式のことだけ調べてくる人・術後の観察や合併症など様々な観点を調べてくる人など、プリセプティによって調べてくることは違います。
「明日この術式を看るから、疾患名と術式・術後合併症、術後ベッドの作成についてはみてきてね」などと伝えれば、調べることが定まっているためわかりやすいです。
調べる範囲が多いと帰宅後の負担が大きいので最小限にしましょう。
実践しながら指導したり後から振り返りを行うことでも学習できるので、事前学習は無理のない範囲で指示しましょう。

とら
とら

メモや事前学習に関しては指導の仕方によって、「強要された」と言われることもあります。最近はパワハラと捉えられかねないので指導には注意が必要です。言い方を工夫しながら、指導すべきことは指導していく必要があります。

指導計画から逸脱している

できないことばかりに目を向けず、得意を伸ばしたりフォローしながらやってみる

夜勤に入れない、看護技術の自立ができないなど、目指していた目標を達成できないことは多々あります。
なぜなら、一年目だからです。自分の新人時代を振り返ってみても、すぐにできるようにはならなかったと思います。
プリセプターは一年かけてなんとか自立させたいため、気持ちも焦りますしできないことに目がいきがちです。
しかし、「できないから任せない」では成長しません。
できることが全くのゼロということはないと思います。
プリセプティも上手く進んでいない自覚があると落ち込んだり焦ってしまうので、順番通りでなくてもプリセプティの得意なことから自立させていったり、フォローを手厚くしながら実施してみてください。

試行錯誤しても上手くいかないこともあります。プリセプティの力量もありますが、配属された病棟が向いていない場合もあると思います。私の経験では、部署異動することで上手く適応できたケースもありました。まずはプリセプティの気持ちを聞いたり上司と相談しながらお互いが働きやすい環境を作れるとよいですね。

他のスタッフからプリセプティへの苦情がきた

指導はリアルタイムに行うよう統一する
プリセプティの現状を病棟全体に理解してもらう

「新人さん、あれができてなかったよ」
「こんなことしてたけどちゃんと教えてる?」などなど…
先輩たちからのご意見に悩まされることがあります。
後から指導しておいてと言われることもありますが、リアルタイムに指導していくことが重要なので、病棟で統一しておくようにしましょう。
そして、スタッフの意見だけでなくプリセプティ本人からそのときの様子を聞くことも大切です。
改めて振り返りを行う時間を取るのは難しいですが、プリセプターが一緒に振り返ることで精神面のフォローにも繋がります。

また、プリセプター以外のスタッフはプリセプティの細かい情報まで把握しにくいため、プリセプターが現状を病棟全体に伝えることが大切です。
できなかったことが噂話のように広まってしまい、「できないレッテル」を貼られてしまうと今後の指導に影響します。
今はここまで指導している・この看護技術は自立してできるなど、具体的にできることとできないことを指導ノートを作成するなどして周知しておきましょう。

指導ノートの作成方法(例)
①看護技術ごとに用紙を準備し、日付と指導した内容(できたこと・できなかったことなど)を記入する欄を作る
②指導にあたったスタッフはその日行った項目に関して記載する
③スタッフの負担にならない程度に簡潔に書ける内容にする

プリセプティと勤務が被らず現状把握しづらい

指導ノートの活用や他スタッフから情報収集

プリセプターが夜勤をしていると、日勤の多いプリセプティとなかなか勤務が合わないことがあります。
指導ノートや他のスタッフから直接聞くなどして情報収集するよう心がけましょう。
病棟の状況によっては難しいこともありますが、上司と相談して週に数日は勤務が被るよう調整してもらうのもよいでしょう。

まとめ:病棟全体でプリセプティへの関わり方を考えよう

プリセプターをするにあたり一番大切なことは、1人で抱え込まず病棟全体で新人指導を行っていくことです。
一年目は上手くいかないことがあって当たり前です。
一年で無理やり自立させようとするのではなく、プリセプティが看護師として少しずつ成長していけるよう援助していきましょう。
プリセプターをすることで自分自身の成長にもつながるので、この記事を参考にプリセプティとしっかり向き合うことができれば幸いです。

 

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