【妊娠中の看護師に捧ぐ最善の働き方】看護師の流産リスクを減らしたい

看護業務

看護師妊婦の最善の働き方は、母子の健康を優先して業務調整すること!

【この記事を読んでわかること】

  • 妊娠中の病棟看護師の働き方がわかる
  • 妊婦が活用できる制度がわかる
  • 看護師の妊娠から休職・産休までの実体験

双子育児中の「とら」です。看護師として8年働いてきました。
その中で同僚の看護師が妊娠した際「切迫流産で入院します」「流産しました」という話をよく聞きました。
そういった看護師の中には「病棟に迷惑かかるから」という理由で頑張りすぎてしまう人が多いように感じます。
実際に自分が妊婦の立場になってみると、妊娠中は様々なトラブルを経験しましたし、休職することで病棟には迷惑をかけたと思いますが、母子ともに無事出産に至ることができました。
看護業務は妊婦にとってかなり過酷な仕事ですが、私の場合は業務調整や休職することでリスクを軽減できたと思います。
そんな実体験をもとにした「妊娠中の看護師の働き方」についてまとめました。

とら

妊娠中の看護師さんが働きやすくかつ休みやすくなってほしいです

流産や切迫流産のリスクが少しでも減りますように!

流産:妊娠22週より前に胎児が亡くなること
切迫流産
:流産になりかけている状態
※流産は過度な労働など心身への負担が原因となることもありますが、初期流産(妊娠12週未満に起こる流産)では胎児の染色体異常によるものも多いです。

現役看護師が妊娠したらするべきこと

  1. 師長さん・スタッフに妊娠報告する
  2. 妊婦が使える制度を確認する
  3. 勤務形態・勤務時間を調整する
  4. 業務内容を調整する
  5. 妊婦用のナース服があるか確認する
  6. 休職することも視野に入れる
とら

私が休職に至るまでに実践したことを具体的に説明していきますね

師長さん・スタッフに妊娠報告する:妊娠発覚~つわり発症時

  例  
「先日産婦人科に行き、妊娠していることがわかりました。」
「今〇週目に入ったところです。今後つわりなどでご迷惑をおかけするかもしれません」

師長さんには必ず報告しましょう。勤務や業務の調整はほぼ師長さんにかかっています。
妊娠発覚と同時に、今後つわりなどで急に休む可能性があることや業務調整してもらう必要があると伝えましょう。

また、他のスタッフにも自ら伝えておくほうがよいと思います。
つわりの症状や勤務調整等があると大概の看護師は勘がよいので、高確率で「妊娠かも?」と気づきます。
調整された分の業務は他のスタッフが担うことにもなるので、事前に妊娠報告しておけば理由が明確でスムーズに対応してもらいやすいです。

病棟は忙しくて休めない?妊娠報告が不安な方へ

ただ、病棟は常に忙しいですし、妊娠報告したら他のスタッフに嫌な顔をされるのでは?と思ったりしますよね。
妊娠=スタッフが減る につながりますからね。
スタッフとの関係性や病棟の雰囲気によって、妊娠報告を躊躇する気持ち、よくわかります。

実際、業務調整などで病棟を回すことが厳しくなるため他のスタッフにしわよせがいくこともあり、妊婦ナースをよく思わない人がいることも事実です。
独身時代は私も妊婦ナースの欠勤や勤務交代などでしんどいな…と思うことがありました。
助け合いって言っても助けてばかりだな、と。

でも、「私は独身だし妊娠しないし助けてばかりだ」って思っていても、いつ自分が出勤できなくなるかわかりませんよね。
病気、事故、親の介護…妊娠出産以外にも長期的に休んだり業務調整が必要なときがあります。
同じ病棟で働く人同士、助け合うことは必須です。
妊娠して体調が悪いときは休む・業務調整してもらう、そのために独身時代は病欠スタッフや妊婦・ママナースも助けてきたようなものです。(本来は助け合いたいと思えるような人間関係を職場で築き上げられたらいいんですけど、それが叶う職場とは限りませんものね…)
そもそも、1人や2人休んだくらいで病棟業務が回らないような職場環境がおかしいわけで、妊婦には何の責任もないんです。

とはいえ、すぐにこの状況は変わりません。
自己主張しなければ、自分がどれだけしんどい状況でも仕事を任され続けます。
嫌な顔されようが、自分の身体と子供を守るためにも、妊娠したら師長にだけでも早期に報告しておくべきです。
私の心構えを載せておきますので、少しでも気持ちが軽くなれば幸いです。

 妊娠報告に対する私の心構え

  • 妊娠報告は母子の安全のため、とにかく子を守ることが第一優先事項
  • 妊娠報告による弊害より、業務調整してもらえない中でのつわりや妊娠トラブルの方が耐えがたいもの
  • 職場に迷惑をかけていることは事実なので、助けてもらっていることに対しては謝罪と感謝
  • できる限り他のスタッフを助ける側に回るようにしておけば、休む時の罪悪感が減る
  • 妊娠中もできる業務は誠心誠意やる
  • もしつわりなどでしんどいときは、病院受診で医師に休職の判断をしてもらえば休みやすくなる
  • 妊娠で人間関係壊れるような職場は退職も検討する

妊婦が使える制度を確認する:妊娠発覚時

産前産後休業(産休)

【産前産後休業(労働基準法)】
産前:出産予定日の6週前(多胎の場合は14週)
産後:出産後8週間以内(6週間は就業できない、6週以降は医師の判断で就業可)
産前産後休業(いわゆる産休)は労働基準法で決められています。
職場によって就業規則があるのでそちらも必ず確認してください。
例えば、私の職場では出産予定日より早く出産に至った場合、実際の出産日から数えて産休扱いになります。
もし帝王切開予定日が決まっていればその日が出産日予定日になり、産休も早まります。
私は産休に入れる日を早く知りたかったので、病院に事情を説明して20週を過ぎたあたりで帝王切開の手術予定を入れてもらいました。

とら

私は妊娠37週目に帝王切開予定となったので、23週目から産休に入りました

自然分娩の場合、実際の出産日が予定日よりも後になる可能性もありますが、ずれた日数も産前休業に含まれます。

母性健康管理指導事項連絡カード

【母性健康管理指導事項連絡カード】
 妊婦が医師の指導内容を職場に伝えるための書類  記載事項  

  • 措置が必要となる症状(つわり、妊娠悪阻、子宮収縮など)
  • 指導事項(入院、自宅療養、勤務時間の短縮、作業の制限)
  • 措置が必要な期間(1週間~4週間)
  • その他の指導事項(妊娠中の通勤緩和・休憩に関する措置)

私はつわりで休職中、このカードを書いてもらうたびに職場へ郵送していました。

とら

産婦人科で相談して

必要な措置を記載してもらいましょう

妊娠への理解が得られず業務調整が難しい場合は、このカードが大活躍しますのでぜひ活用しましょう。
詳しい内容は厚生労働省のホームページか母子手帳にも載っていますのでご確認ください。

出典:厚生労働省ホームページ(母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について)(母健連絡カード様式

 

傷病手当金

【傷病手当金】健康保険
被保険者が病気やけがの療養のため仕事を休み給料を受けられないときに支給される

  支給条件  

  • 業務外の理由で病気やケガのための療養中
  • 仕事に就けない(労務不能)
  • 3日連続して休職(待機期間)、4日目以降にも休んだ日がある
  • 給与の支払いがないこと

  支給期間  

  • 支給開始日から1年6カ月の期間で支給条件を満たしている日
  • 途中で出勤したり休職したりを繰り返しても、3日間の待期期間があれば支給の対象

   支給額   

  • 1日あたりの金額=支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2
  • 出産手当金を同時に受け取る場合、傷病手当金の額の方が多ければその差額が支給される

「妊娠は病気ではない」とよく言いますが、「妊娠悪阻」「切迫流産」など病名がつけば、傷病手当金が受け取れます。
受診や薬剤治療・入院歴などがあれば、病名はつきます。

【支給額の例】
標準報酬月額が18万、休業した日数60日だとすると

 一日あたりの金額:18万÷30日(=6000円)の3分の2=4000円
 支給額:4000円×60日=24万円

今回は計算しやすいので標準報酬月額18万円でしてみました。
フルタイムで働いていたらもう少しもらえると思うので、ご自身の標準報酬月額を確認して計算してみてください。
健康保険は公務員か民間の会社員かなどで加入しているものが違いますので、詳しくはご自身が加入している健康保険をご確認ください。

出産手当金

【出産手当金】健康保険
 出産のために会社を休み、給料を受けられないときの生活保障として支給される
  支給条件  

  • 被保険者が出産した または 出産する
  • 妊娠4カ月(85日)以上の出産(早産・死産・人工妊娠中絶含む)
  • 出産のため仕事を休み、事業主から給与支払いがない

  支給期間  

  • 出産予定日に出産した場合:産前42日(多胎98日)+産後56日=98日(多胎154日)
  • 予定日より遅れて出産した場合:遅れた日数分が追加になる

   支給額   

  • 1日あたりの金額=支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2

産休中に無給の場合は、健康保険から出産手当金を受け取れます。
職場に産休中の給料の有無を確認してみてください。
退職していても受け取れる場合があるので、詳しくは加入している健康保険をご確認ください。

【支給額の例】
標準報酬月額が18万、出産予定日に出産した場合

 一日あたりの金額:18万÷30日(=6000円)の3分の2=4000円
 支給額:4000円×98日=39万2千円

その他:職場の就業規則を確認する

  • 休職・産休中の賞与の有無
  • 勤務調整による減額があるか
  • 有休の残数

フルタイムで働いている方は、勤務形態が変わると基本給がカットされる場合がありますので要注意です。

とら

私の病院では、
日勤常勤⇒基本給10%カット

日祝休み⇒基本給15%カット

など、かなり痛手ですね

勤務形態・勤務時間を調整する:妊娠発覚~つわり発症時

  • 夜勤をやめる または 調整する(日勤のみに変更、夜勤回数を減らす等)
  • 勤務時間の短縮(時短勤務、休憩時間の確保、通勤緩和等)

夜勤はやめてください!!

お金も大切ですが、子の命には代えられません。
人が足りないから夜勤はなくせない?
がんばって夜勤したところで、胎児になにかあっても職場の人は助けてくれません。
妊娠してなくても夜勤は過酷です。妊婦の身体で無理は禁物です。
夜勤当日に働けなくなることもあるかもしれませんし、スタッフが足りないからこそ急に代わってもらうことも難しいので夜勤は外してもらいましょう。

とら

妊娠後も病棟業務を続けるなら

日勤常勤または時短勤務が理想!
やむを得ず夜勤する場合も回数は減らしましょう

「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用して調整しましょう!

業務内容を調整する:妊娠発覚~つわり発症時

看護師の病棟業務は基本的に立ち仕事で肉体労働です。
生死にかかわることも多く精神的なストレスも大きいです。
そんな看護業務の中でもこれはやめてほしいという危険な業務を3つ挙げました。

  • ADL介助(移乗、排泄介助、入浴介助)
  • 感染症患者の対応
  • 認知症・不穏患者の対応

危険な業務‐その1
ADL介助(移乗、排泄介助、入浴介助)

ADL介助は身体的な負担がかなり大きいです。
患者さんの体重を支えるのは困難なので、移乗・排泄介助・入浴介助は避けたほうがよいです。
もし実施するときは一人で行わず、二人以上の複数で介助してください。
おむつ交換をしようとしてお腹にベッド柵が当たったり食い込んだりすることも注意してくださいね。
食事介助はにおいづわりがあると厳しいかもしれませんが、比較的安全な業務だと思います。

とら

食事介助や口腔ケアなどできることを積極的に見つけていこう

危険な業務‐その2
感染症患者の対応

感染症患者の対応は避けてください。

感染症にかかると母子の命にかかわります。
風疹など胎児の先天性異常のリスクが高まるウイルスもあります。

とら

これも母性健康管理指導事項連絡カードを活用しましょう

 

危険な業務‐その3
認知症・不穏患者の対応

認知症や不穏の患者さんが看護師を攻撃してくる可能性があります。
万が一腹部を狙われれば、胎児を危険にさらしてしまいます。
そうならないためにも認知症や不穏患者の対応は避けるか複数のスタッフで対応しましょう。

妊娠中でも可能・身体の負担が少ない病棟での看護業務

  • 入院患者のアナムネ
  • バイタルサイン測定
  • ルートキープ、採血
  • 点滴作成
  • 入力業務(看護サマリーや看護記録など)
  • カンファレンス
  • 患者教育
  • 物品補充・整理
  • 薬の仕分け
  • 簡単な環境整備
  • ナースコール対応(用件聞くだけでも)
  • 電話対応
  • リーダー業務

上記以外にも病棟によって細かい業務はあると思います。
他のスタッフにADL介助などを任せている分、記録や雑務などできることを見つけて助け合いましょう。

とら

できるだけデスクワークを!
休憩をとらせてもらいながら
負担の少ない業務をしましょう
私はリーダー業務やカンファで使う資料を作るなどしてました
おむつ交換などするときは2人以上で行ってました

妊婦用のナース服があるか確認する:妊娠中期に入るまでに

ナース服を貸与している職場なら、妊婦用のナース服が存在する場合があります。
もしあれば活用しましょう。

普段のナース服がセパレートタイプであれば、ウエストが腹部を締め付け苦しいです。
妊婦用のナース服を着ていれば、自分が妊婦だということを周知できるのもメリットです。

とら

私の職場はナース服の貸与はありますが妊婦用はありませんでしたので、サイズアップして着用していました

産休まで休職することも視野に入れる

いくら勤務や業務を調整しても、妊娠中のトラブルは起こります。
私自身、長期にわたってつわりの症状があったり、妊娠中期に入ってからも出血やお腹の張りなどありました。

なんとか出勤できても、通勤で体力消耗してしまってしばらく動けない日もありました。
安静にしていても体調が悪い日もあります。

そんな時は、休職を検討してください。

デスクワークだったとしても、身体への負担はあります。
出勤すると、無理して業務をしてしまうこともあります。
何かあってから休むのではなく、リスクがあるなら予防策として休職を選択するのも一つの手だと思います。

とら

双子妊婦で高リスクだった私は産休前に休職を選択しました
次の項目で
私が産休まで休職すると決めた経緯を説明します

【体験談】現役看護師が妊娠悪阻と診断されて休職・産休に至るまで

妊娠6週:つわりの症状が出始める(通勤で酔う、嘔気)
 ⇒師長に報告・日準だけの勤務に変更

妊娠7週:つわり悪化で早退や欠勤が続く
 ⇒スタッフにも妊娠報告。産婦人科で点滴をうけ、2週間休職

妊娠10週:つわり改善せず点滴通いとなり、さらに1カ月休職
 ⇒1カ月後の復帰を目指し、職場に日勤のみ時短勤務を希望

妊娠15週:つわりは落ち着いてくるも、体力低下やお腹の張りあり復帰見送る
 ⇒この頃コロナ感染も増えてきており、病棟で働くことにも不安があり産休まで休職するか悩む

妊娠19週:双子出産経験のある助産師からリスクの説明を受け、産休までの休職を決意
 ⇒職場へは母性健康管理指導事項連絡カードを提出し、師長には電話で報告

妊娠23週~産休へ(双子妊娠のため帝王切開予定日の14週前)

とら

私は妊娠悪阻で休職してから全く復帰せず産休に至りました

妊娠初期のつわりがない時期は、準夜勤務もするつもりでした。
しかし、つわりの症状が出たとき出勤もままらなくなったため、夜勤どころか日勤さえ難しくなりました。
急に他のスタッフに夜勤を代わってもらうことになったとき、夜勤すべきでないと思いやめました。

妊娠中期に入ると「安定期」と言われますが、リスクがないわけではありません。
多胎妊娠に安定期はありません、と病院で言われます。
私の場合、つわりの次はお腹の張りや出血で救急受診をした経験もあり、安定とは言えませんでした。

職場には寝たきりの患者も多く、ADL介助は避けられそうになかったです。
この状況で働くと、もっと大きなトラブルが起こるのではないかという不安がぬぐえませんでした。

助産師から、多胎妊娠は仕事復帰してもすぐに切迫流産・早産となって入院することも多いと聞き、医師とも相談した結果「産休まで休職」という選択に至りました。
結果的に、流産や切迫流産になることなく産休に入り無事出産することができました。

とら

基本的に自宅で家事をしながら安静に過ごしていました
医師の許可があるときは近所のスーパーで買い物程度の外出もしていました
休職しているからと言って外出してはいけない、というわけではありません

看護師は妊娠したら休職すべきと言いたいわけではありません。
職場の業務内容・自分の体調・妊娠中のリスクを総合的に考えて、勤務調整をしてほしいです。

まとめ:妊娠中の看護師は、利用できる制度を使って母子の健康最優先で過ごす

  1. 師長さん・スタッフに妊娠報告する
  2. 妊婦が使える制度を確認する
  3. 勤務形態・勤務時間を調整する
  4. 業務内容を調整する
  5. 妊婦用のナース服があるか確認する
  6. 休職することも視野に入れる

看護師は患者さんのため・職場のためにがんばりすぎてしまう人が多いように思います。
妊婦の身体は想像以上に不安定ですので、お腹の赤ちゃんを守るためにも、あらゆる制度を活用しながら母子の健康を最優先に考えた働き方をしてくださいね。

 

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