地域包括ケア病棟で実際に行っている退院前カンファレンスとは
看護師のとらです。地域包括ケア病棟で働いています。
病棟ではいろんなカンファレンスがありますが、他職種がより多く集まるのは退院前カンファレンスです。
院内のスタッフだけでなく、院外から様々な他職種が集まります。
今回は、退院前カンファレンスにおいて病棟看護師が行う事前準備に必要な情報をまとめました。
退院前カンファレンスって準備することも多いしどうやって進めたらいいの?
地域包括ケア病棟で実際に行っている退院前カンファレンスを参考にまとめています。
【この記事を読んでわかること】
- 退院前カンファレンスの事前準備で必要な情報
- 退院前カンファレンスの進め方
退院予定の患者が在宅に帰る前に、情報共有や必要なサービスの調整のために行う会議のことです。
在宅療養の方針を決定するとともに、病院と在宅での担当者が顔合わせを行う場でもあります。
退院前カンファレンスの事前準備で必要な情報
- 患者の経過と治療方針
- 患者・家族の意思
- ADLの状況
- IADLの状況
- 要介護度
- 医療処置
- 薬剤の内容と管理方法
- 住居環境
- 家族の介護力・家族への指導
患者の経過と治療方針
患者さんの概要と、医師の治療方針は必ず必要な情報です。
退院前カンファレンスに医師が参加する場合は説明してくれますが、病棟看護師も簡潔に説明できるように準備しておきましょう。
患者・家族の意思
患者さん本人と家族の意思を聞き、退院に向けての方向性を決めておく必要があります。
退院前カンファレンスではその方向性に沿って、患者の現状から必要なサービス調整を行っていきます。
事前に病院と在宅担当者で情報共有しておくことで、カンファレンスが円滑に進みます。
ADLの状況
入院中のADL状況やケア内容をまとめておきましょう。
病棟で行っているケアを時系列でまとめておくと、家族も在宅での生活をイメージしやすいです。
また、自宅退院を目指すにおいて患者さんの自立を促すことも大切です。
そのなかで、ADLの課題と必要な介護サービスを提案できるようにしておくと、在宅担当者にもわかりやすいです。
リハビリテーションが導入されている場合は、療法士とも連携してより明確に説明できるようにしておきましょう。
【ADLの主な内容】
- 移乗・移動方法
- 体位変換
- 食事
- 排泄
- 入浴・保清・更衣
- 口腔ケア
- 認知機能・精神状態
移乗・移動方法
杖、車椅子、シルバーカーなどの補助具が必要な場合は購入やレンタルの手続きを行います。
介助が必要な場合は、具体的な介助方法を共有します。
体位変換
自分で寝返りできない・不十分な場合は、褥瘡予防のため寝具の調整を行います。
病院のように家族が決まった時間に体位変換することは難しいため、エアマットや自動で体位変換できるようなマットの導入を検討します。
体位保持のためのクッション類も併せて準備します。
食事
経口摂取の場合は、食事の形態・調理方法・食器・自助具などを検討します。
胃ろうから注入の場合は、栄養剤の選択・注入方法・注入回数・実施者の選定と技術指導が必要です。
医師・栄養士・言語聴覚士と連携して、在宅で実施できる方法を模索していきます。
排泄
トイレ、ポータブルトイレ、おむつ・パットの使用、失禁の有無、尿意の有無などの情報をまとめます。
自分で動ける場合は、在宅のトイレが使用できるのか確認する必要があります。
ポータブルトイレを使用する際は、中身の破棄方法についても検討します。
おむつ介助が必要な場合は、普段の尿量や排尿回数などをもとにおむつの種類や交換のタイミングを検討します。
入浴・保清・更衣
自宅で入浴する場合は、手すりやシャワーチェア等の環境整備が必要です。
介助量が多い場合は訪問入浴やデイサービスを利用します。
口腔ケア
歯磨き・義歯のケア・吸引の必要性を検討します。
誤嚥しやすい場合は、言語聴覚士と口腔ケアの方法を共有しておきます。
認知機能・精神状態
記憶障害、見当識障害、失語、失認、判断力の低下などの情報を在宅担当者と共有しておく必要があります。
入院前や病棟生活の中での患者さんの具体的な言動や注意点を明確にしておくことで、対策を考えることができます。
IADLの状況
掃除・洗濯・調理・買い物など、入院前と同様に実施可能なのか検討する必要があります。
こちらもリハビリテーションの状況を踏まえて、ヘルパーを依頼したり、宅配を利用するなど必要なサービスを検討していきます。
要介護度
入院前後でADLが低下している場合、介護保険の申請や要介護度の見直しを行う必要があります。
介護度によって導入できるサービスが異なりますし、介護保険の申請には時間を要すため、早期から介入することが重要です。
医療処置
在宅で医療処置の継続が必要な場合、往診医や訪問看護を導入することが多いです。
退院時にどの程度の医療処置と管理が必要なのかを明確にしておくことが大切です。
医療機器や物品の準備は物によってすぐに手配できない物もあるので、退院時期に合わせて早めに進めていきましょう。
また、同居している家族に吸引や酸素の取り扱いなどを指導する場合もあります。
退院前カンファレンスまでに、在宅でも必要となる医療処置をピックアップしておきましょう。
医療処置の例
- 点滴・薬剤管理(栄養剤や疼痛コントロールなど)
- 皮膚処置(ストーマ、褥瘡管理など)
- 胃ろう(栄養剤の注入)
- 膀胱留置カテーテル
- 吸引
- 人工呼吸器
- 在宅酸素
- 血糖測定・インスリン管理
薬剤の内容と管理方法
内服管理が課題に上がることが多いです。
病状や認知機能によっては自己管理が難しい場合があるため、入院中から管理方法を評価していくことが重要です。
とくに独居や家族の協力が得られない場合は、内服薬を最小限にする、カレンダー管理を試すなど自己管理できる工夫を行います。
自己管理が難しい場合は、訪問看護やデイサービスなどを導入しそのタイミングで薬内服をする方法もあります。
退院前までに管理方法を評価したうえで、サービスの導入を検討します。
住居環境
玄関・リビング・寝室・浴室・トイレ・廊下などの状況を事前に情報収集しておきます。
段差や手すりの有無、階段の有無、居室の階数、賃貸の場合エレベーターの有無などを確認します。
患者家族に間取り図を描いてもらうか、写真を撮ってもらうとわかりやすいと思います。
また、改修が必要そうであれば実際に訪問して住居環境を確認することもあります。
家族の介護力・家族への指導
家族・キーパーソンの情報収集
- キーパーソンやその支援者の有無
- 家族の勤務状況(患者が1人になる時間帯があるかなど)
- 家族の健康状態(身体面・精神面)
- 家族の理解力(必要な医療処置ができるかなど)
キーパーソンとなる人、他の介護者の有無を確認します。
老老介護も増えているため、介護者自身が高齢であり十分な介護力が望めない場合も多いです。
仕事をしながら介護をする家族もいますので、介護者に負担がかかりすぎないような配慮が必要です。
また、ADL介助や医療処置を家族が担う場合は技術指導も必要です。
家族が手技を習得するまでには時間を要する場合もあるので、計画的に指導を行うことが重要です。
退院前カンファレンスの進め方
参加者
患者・家族・医師・病棟看護師・医療ソーシャルワーカー・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・ケアマネジャー・往診医・訪問看護・ヘルパーなどです。
医療機器や福祉用具が必要な場合は、レンタルや販売を行っている企業スタッフが参加する場合もあります。
司会者
医療ソーシャルワーカーが司会進行役を担うことが多いです。
不在の場合は病棟看護師が行うこともあります。
進め方
医療ソーシャルワーカーが参加者を説明したあと、各担当者より患者の経過と課題点を説明します。
患者・家族の希望に沿って、在宅での課題に応じたケアプランの提案を行います。
退院前カンファレンスでは病院と在宅担当者と共通認識を図ることが重要なので、全体の大まかな方向性と課題の共有ができれば、あとはカンファレンス後に各担当者同士で細かい方針を決めていきます。
まとめ:患者の方向性と課題を明確にし、他職種と在宅療養の方針を決定していくことが重要
- 退院前カンファレンスは病院と在宅担当者の間で共通認識を図り、在宅療養の方針を決定していく
- 病棟看護師は入院時から在宅を見据えた情報収集を行い、患者の方向性と課題を明確にする役割を担っている
地域包括ケア病棟では、在宅療養を希望していても自宅環境や介護者不足などの問題で退院困難な事例が多々あります。
患者さんやその家族の希望にできる限り寄り添い、どうすれば自宅退院が可能かを考えながら日々退院調整を行っています。
退院前カンファレンス当日も大切ですが、それまでの事前準備である程度の方向性と課題点を見つけておくことが重要です。
病棟看護師として早期から情報収集に取り組み、患者さんが安心して在宅療養できる環境が整えられるような退院前カンファレンスを目指しましょう。
地域包括ケア病棟について詳しくはこちら≫地域包括ケア病棟の業務内容がわかる
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